炭酸緩衝液中における薬物の析出に与えるpHおよび緩衝能の影響
2025-02-05
今回の論文は、炭酸緩衝液中における薬物の析出に、pHおよび緩衝液が与える影響を検討しました。
Effect of pH and Buffer Capacity of Physiological Bicarbonate Buffer on Precipitation of Drugs
https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.molpharmaceut.4c00996
以前の論文では、様々なpKaの薬物の析出をpH 6.5で調べていました。その結果から、
酸性薬物: pKa < pH
塩基性薬物: pKa > pH
である薬物の場合、炭酸緩衝液中とリン酸緩衝液中で、析出挙動が異なる傾向があることがわかりました。
しかし、pKa値が等間隔で並ぶように薬物を選択することは困難でした。
そこで、今回はpHを振って、pH shift析出試験をおこないました。
その際、各pHにおける薬物初期濃度は、非解離型分子の溶解濃度(C0)と固有溶解度(S0)の比率が同じになるように設定しました。ここが、本実験のデザインで工夫した点です。
結果、
酸性薬物: pH > pKa
塩基性薬物: pH < pKa
の場合、炭酸緩衝液中とリン酸緩衝液中で、析出挙動が異なることが、明確に判明しました。
また、緩衝能の影響も、炭酸緩衝液中とリン酸緩衝液中で大きく異なりました。
種晶を加えた検討からは、結晶成長について緩衝液が影響を与えていることがわかりました。
一方で、緩衝能に応じて析出物の結晶多型が異なる場合があることから、核形成についても緩衝種の影響を受けていることが示唆されました。
酸性薬物の場合、pH > pKaの領域でフリー体が析出する場合、
R-COO- + H+ → RCOOH(↓)
となりますので、pHは上がります。Bulk溶液中では、中和は十分な速度で起きますので、緩衝能が十分であればpHは一定に保たれます。一方で、表面pHの中和は、非攪拌水層透過時間と中和時間の競争になります。炭酸緩衝液は、CO2/H2CO3の水和/脱水反応が遅く、したがって、リン酸緩衝液と比較して中和反応がケタ違いに遅いため、析出は炭酸中で遅くなります。
今回の結果は、このことを非常に明確に示しております。
Effect of pH and Buffer Capacity of Physiological Bicarbonate Buffer on Precipitation of Drugs
https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.molpharmaceut.4c00996
以前の論文では、様々なpKaの薬物の析出をpH 6.5で調べていました。その結果から、
酸性薬物: pKa < pH
塩基性薬物: pKa > pH
である薬物の場合、炭酸緩衝液中とリン酸緩衝液中で、析出挙動が異なる傾向があることがわかりました。
しかし、pKa値が等間隔で並ぶように薬物を選択することは困難でした。
そこで、今回はpHを振って、pH shift析出試験をおこないました。
その際、各pHにおける薬物初期濃度は、非解離型分子の溶解濃度(C0)と固有溶解度(S0)の比率が同じになるように設定しました。ここが、本実験のデザインで工夫した点です。
結果、
酸性薬物: pH > pKa
塩基性薬物: pH < pKa
の場合、炭酸緩衝液中とリン酸緩衝液中で、析出挙動が異なることが、明確に判明しました。
また、緩衝能の影響も、炭酸緩衝液中とリン酸緩衝液中で大きく異なりました。
種晶を加えた検討からは、結晶成長について緩衝液が影響を与えていることがわかりました。
一方で、緩衝能に応じて析出物の結晶多型が異なる場合があることから、核形成についても緩衝種の影響を受けていることが示唆されました。
酸性薬物の場合、pH > pKaの領域でフリー体が析出する場合、
R-COO- + H+ → RCOOH(↓)
となりますので、pHは上がります。Bulk溶液中では、中和は十分な速度で起きますので、緩衝能が十分であればpHは一定に保たれます。一方で、表面pHの中和は、非攪拌水層透過時間と中和時間の競争になります。炭酸緩衝液は、CO2/H2CO3の水和/脱水反応が遅く、したがって、リン酸緩衝液と比較して中和反応がケタ違いに遅いため、析出は炭酸中で遅くなります。
今回の結果は、このことを非常に明確に示しております。