Zwitterionは胆汁ミセルに結合するか?

2024-09-03
Zwitterionは胆汁ミセルに結合するでしょうか?
物性研究者にとっては、とても興味深いですよね?

Food and bile micelle binding of zwitterionic antihistamine drugs

https://pub.iapchem.org/ojs/index.php/admet/article/view/2454
DOI: https://doi.org/10.5599/admet.2454

Zwitterionとは、1つの分子内に、酸性官能基と塩基性官能基の両方を持ち、pKa酸性官能基pKa < 塩基性官能基pKaである化合物です。例としては、アミノ酸があげられます。アミン+酸 = アミノ酸ですからね。。。このような薬物は、等電点付近では、「主に」、

NH+ --- COO-

という、プラスとマイナスの電荷をもった分子形(zwitterion)になります。
「主に」、としているのは、実際には

NH---COOH

という形の分子形との平衡状態にあるからです。

実は、結構な数のZwitterion型薬物において、食事の影響は負になります。今回は、花粉症の治療に良く使われる抗ヒスタミン剤に注目しました。
本研究の結果から、これらの薬物について、食事の影響が負になる原因の1つが胆汁ミセル結合であることが示唆されました。経口吸収が、消化管上皮細胞膜透過律速の場合、胆汁ミセル結合により、非結合型分率が下がるので、食事の影響は負なると考えられます。

これまでにも、親水性塩基性化合物や4級アンモニウム塩が、その脂溶性(logDoctanol)からの直観的予想に反して胆汁ミセルに結合することを明らかとしてきました。今回、Zwitterion型薬物も結合することが判明したことで、より幅広い薬物が、胆汁ミセルに結合することが分かってきました。具体的に、どのような分子間相互作用が影響しているのか?については今後の検討課題です。

胆汁ミセル結合率(fu)は、薬物の経口吸収を理解するうえで基本となる重要なパラメータです。
水溶性が低い薬物の場合、fu = blank FaSSIF/FeSSIFの溶解度比、として簡単に求まります。一方で、水溶性が高い薬物の場合にはこの方法は使えません。
今回用いた動的透析法は、水溶性が高い薬物のfuを測定できる、とても簡単な方法です。
皆様、是非、お試しいただければと思います。