様々な薬物(IR製剤)の溶出プロファイル 炭酸緩衝液とリン酸緩衝液の比較

2024-04-26
様々な薬物(IR製剤)の溶出プロファイルは、生体に近い炭酸緩衝液(BCB, 10 mM pH 6.8)とリン酸緩衝液(JP2)でどれくらい違うのだろうか?

医薬品開発の現場にとって、これは大きな関心事だと思います。BCBとJP2で差が出るのが稀な場合のみならば、このまま慣れ親しんでいたリン酸緩衝液を使い続けたい、、、という方も多いと思います。

Dissolution Profiles of Immediate Release Products of Various Drugs in Biorelevant Bicarbonate Buffer: Comparison with Compendial Phosphate Buffer

https://link.springer.com/article/10.1007/s11095-024-03701-6

11/15例において、ある時点で溶出率に差(0.8倍未満又は1.25倍以上)が認められた。4/15例において、溶解曲線下の面積比が同等でなかった(<0.8または>1.25倍)。

です。特に、塩の場合、過飽和濃度に大きな差が見られました。
本件研究の結果から、BCBとJP2の差は明らかです。

理由は、バルク溶液中の緩衝能の差だけではありません。表面pHに与える影響の差が大きく、これには緩衝液の「中和速度」が大きく影響しています。

当たり前のことですが、酸性薬物や塩基性薬物の場合(フリー体も塩も両方)、リン酸緩衝液中における溶出プロファイルをPBPKモデルに入れたところで、血中濃度推移を正しく予測することはできません。(フィッティングに騙されないように。。。)

それでもどうしてもリン酸にこだわりたい。。。かもしれないです。炭酸と同じになるリン酸濃度があるのではないか???
しかし、バルク溶液中の緩衝能が生体のBCBに合うようにリン酸の濃度を低くしても、表面pHを合わせることは出来ません。逆に、表面pHを合わせようとすると、バルク溶液の緩衝能は著しく低い値となります。原理的に、バルク溶液中の緩衝能と薬物表面のpHを同時に合わせることはできません。

落し蓋法はとても簡単で、だれにでもすぐに出来ます。炭酸緩衝液に対して、強い抵抗感を持っている方もいらっしゃるとは思いますが、是非一度、お試しいただけると、あっけないほど簡単なのが、良く分かると思います。