溶出試験第2液(JP2)のpHについて
2024-04-03
最近、JP2について、疑問に思ったり、質問されたりしましたので、すこし調べてみました。
Yoshida, H., Abe, Y., Tomita, N., & Izutsu, K. I. (2020). Utilization of diluted compendial media as dissolution test solutions with low buffer capacity for the investigation of dissolution rate of highly soluble immediate release drug products. Chemical and Pharmaceutical Bulletin, 68(7), 664-670.
JP2のpHの実測値は、6.9、です。
え!、ホント???気になりますよね?
実際、よーーーーく読んでみると、溶出試験第2液のpHが6.8であるとは、局法には書いてありません。
「局法の記載」
溶出試験第2液(JP2): pH6.8のリン酸塩緩衝液1容量に水1容量を加える。
pH6.8のリン酸塩緩衝液: りん酸二水素カリウム3.40 g及び無水リン酸水素二ナトリウム3.55 gを水に溶かし、1000 mLとする.
pH6.8のリン酸塩緩衝液は、
りん酸二水素カリウム 0.025 mol/L
無水リン酸水素二ナトリウム 0.025 mol/L
ですので、リン酸は合計 0.050 mol/Lです。
この場合、イオン強度(I)は、約0.1 mol/Lとなり、リン酸の第2pKaは、6.78になります(37 ℃)。
したがって、理論上、pHは6.8になります。
https://en.wikipedia.org/wiki/Phosphate-buffered_saline
一方、これを2倍に希釈したJP2では、イオン強度(I)は、約0.05 mol/Lとなり、リン酸の第2pKaは、6.86になります(37 ℃)。
したがって、理論上、pHは6.9になります。
実際には、pH測定の施設間誤差は0.05ぐらいはありますので、あまり気にしても仕方がないのかもしれませんが、それでも、最近はpHメーターの性能が良いので、気になる方もおられると思います。
なお、FujifilmWakoでは、
溶出試験第2液(JP2): 6.87~6.97 (25℃)
pH6.8のリン酸塩緩衝液: 6.81~6.89 (25℃)
pHは規定値の±0.05以内(25℃)
となっております。
ところで、pHメーターに用いる中性リン酸塩標準液(pH 6.86 (25℃)、6.84 (37℃)) は、
0.025 mol/kg りん酸二水素カリウム
0.025 mol/kg りん酸水素二ナトリウム
です。
https://www.horiba.com/jpn/water-quality/support/electrochemistry/the-basis-of-ph/measuring-ph-using-a-glass-electrode/reference-solution/
容量モル濃度と重量モル濃度の違いがありますが、基本的に、局法のpH6.8のリン酸塩緩衝液と同じになります。
私はこれまで、JP2は小腸を模擬していると、教わってきましたし、教えてきました。しかし、実際にはそれだけではないのかな?と思いました。その昔、どのような経緯でJP2が制定されたのか分かりませんが、純度の高い物質が入手可能で、(pHメータが無くても)再現性良く作製できるという理由も、昔は大きかったのかな?と思いました。実際、自分が入社当時に使用してたpHメーターは、デジタル表示ではなく、タコメーター表示で、針がゆらゆら揺れていました。
そう考えると、すくなくともBE予測に関しては、JP2にこだわる必要は全くなく(むしろ、こだわるべきではなく)、生体と同じ、炭酸緩衝液を第一選択にした方が良いと思います。リン酸緩衝液と炭酸緩衝液は、かなり性質が異なります。
実際のところ、JP2による溶出試験では、臨床BEを、あまり良く予測できないことは、現場の皆さんが一番よく分かっているのかな?と思います。
BE予測を外すことは、かなり高い授業料だと思います。今一度、冷静に考えてみれば、JP2が臨床BEを予測できないのは当たり前なのかもしれません。人類は、かなり高い授業料を払ってきましたが、もう、このことに気が付いても良いのかもしれません。
これまでは、炭酸緩衝液の使用は手間とコストがかかり大変でしたので、JP2を使うのも仕方がなかったと思います。しかし、今では、落し蓋法があります。リン酸緩衝液と、手間は変わりません。
みなさん、先入観を捨てて、炭酸緩衝液を試してみませんか?
Yoshida, H., Abe, Y., Tomita, N., & Izutsu, K. I. (2020). Utilization of diluted compendial media as dissolution test solutions with low buffer capacity for the investigation of dissolution rate of highly soluble immediate release drug products. Chemical and Pharmaceutical Bulletin, 68(7), 664-670.
JP2のpHの実測値は、6.9、です。
え!、ホント???気になりますよね?
実際、よーーーーく読んでみると、溶出試験第2液のpHが6.8であるとは、局法には書いてありません。
「局法の記載」
溶出試験第2液(JP2): pH6.8のリン酸塩緩衝液1容量に水1容量を加える。
pH6.8のリン酸塩緩衝液: りん酸二水素カリウム3.40 g及び無水リン酸水素二ナトリウム3.55 gを水に溶かし、1000 mLとする.
pH6.8のリン酸塩緩衝液は、
りん酸二水素カリウム 0.025 mol/L
無水リン酸水素二ナトリウム 0.025 mol/L
ですので、リン酸は合計 0.050 mol/Lです。
この場合、イオン強度(I)は、約0.1 mol/Lとなり、リン酸の第2pKaは、6.78になります(37 ℃)。
したがって、理論上、pHは6.8になります。
https://en.wikipedia.org/wiki/Phosphate-buffered_saline
一方、これを2倍に希釈したJP2では、イオン強度(I)は、約0.05 mol/Lとなり、リン酸の第2pKaは、6.86になります(37 ℃)。
したがって、理論上、pHは6.9になります。
実際には、pH測定の施設間誤差は0.05ぐらいはありますので、あまり気にしても仕方がないのかもしれませんが、それでも、最近はpHメーターの性能が良いので、気になる方もおられると思います。
なお、FujifilmWakoでは、
溶出試験第2液(JP2): 6.87~6.97 (25℃)
pH6.8のリン酸塩緩衝液: 6.81~6.89 (25℃)
pHは規定値の±0.05以内(25℃)
となっております。
ところで、pHメーターに用いる中性リン酸塩標準液(pH 6.86 (25℃)、6.84 (37℃)) は、
0.025 mol/kg りん酸二水素カリウム
0.025 mol/kg りん酸水素二ナトリウム
です。
https://www.horiba.com/jpn/water-quality/support/electrochemistry/the-basis-of-ph/measuring-ph-using-a-glass-electrode/reference-solution/
容量モル濃度と重量モル濃度の違いがありますが、基本的に、局法のpH6.8のリン酸塩緩衝液と同じになります。
私はこれまで、JP2は小腸を模擬していると、教わってきましたし、教えてきました。しかし、実際にはそれだけではないのかな?と思いました。その昔、どのような経緯でJP2が制定されたのか分かりませんが、純度の高い物質が入手可能で、(pHメータが無くても)再現性良く作製できるという理由も、昔は大きかったのかな?と思いました。実際、自分が入社当時に使用してたpHメーターは、デジタル表示ではなく、タコメーター表示で、針がゆらゆら揺れていました。
そう考えると、すくなくともBE予測に関しては、JP2にこだわる必要は全くなく(むしろ、こだわるべきではなく)、生体と同じ、炭酸緩衝液を第一選択にした方が良いと思います。リン酸緩衝液と炭酸緩衝液は、かなり性質が異なります。
実際のところ、JP2による溶出試験では、臨床BEを、あまり良く予測できないことは、現場の皆さんが一番よく分かっているのかな?と思います。
BE予測を外すことは、かなり高い授業料だと思います。今一度、冷静に考えてみれば、JP2が臨床BEを予測できないのは当たり前なのかもしれません。人類は、かなり高い授業料を払ってきましたが、もう、このことに気が付いても良いのかもしれません。
これまでは、炭酸緩衝液の使用は手間とコストがかかり大変でしたので、JP2を使うのも仕方がなかったと思います。しかし、今では、落し蓋法があります。リン酸緩衝液と、手間は変わりません。
みなさん、先入観を捨てて、炭酸緩衝液を試してみませんか?