塩のFa予測は、どこまでできる?
2023-03-28
以前のブログで、「pH control域での平衡溶解度は、塩から測定してもフリー体から測定しても、同じ値になる。」というお話をしました。
https://www.c-sqr.net/c/pcfj/reports/510288
そうすると、平衡溶解度を用いたFa予測では、塩とフリー体でFaが同じになると予測されてしまいます。
もちろん、実際には塩として投与した場合の方が、Faは上がります。
塩の溶出により、消化管内において、一過的に過飽和濃度になることが、Faが上がる理由です。
そうすると、どの程度の時間、消化管内で過飽和濃度が続くのか?の見積もりが、Fa予測に重要となってきます。
この点について、前回紹介した論文の中で、考察しています。
https://www.c-sqr.net/c/pcfj/reports/517189
まず初めに、完全溶解時の溶解濃度(C)を計算します。
C = 投与量/消化管溶液量(130 mL)
塩のKspは通常とても高いので、フリー体の析出が全く起こらない場合には、塩は速やかに溶けます。
次に、Population balance modelで、この濃度における析出誘導時間(induction time (tind))を計算します。(PBMは、フリー体さえあれば構築できます。)
tindが小腸滞留時間よりも長い場合(例: tind > 4 h):
消化管での析出が起きないと予想されます。この場合、溶液投与と同じになるように溶解度を設定することでFaを予測できます。
tindが非常に短い場合(例:tind < 5 min):
消化管で瞬時に析出が起きると予想されます。この場合、析出物の平衡溶解度を用いてFaを予測できます。(例えば、析出物が(フリー体の)アモルファスの場合には、アモルファスの平衡溶解度(= LLPS濃度)を用いる。)
中間の場合:
より詳細なシミュレーションが必要です。
(注意:析出誘導時間は、1次速度式では表現できない。単純な析出速度定数では上手く行かない。)
LLPS濃度の実測あるいは予測についてはこちら↓
https://www.c-sqr.net/c/pcfj/reports/506760
逆に言うと、4時間以内に析出が起きない濃度(臨界過飽和濃度(準安定濃度))と、5 min以内で析出が起きる濃度(即時析出濃度)を計算し、投与量がそれらの範囲外の場合には、Gut frameworkでFaをある程度正確に予測できると考えられます。(Gut frameworkではフリー体の予測値は誤差2倍以内程度。)
https://www.c-sqr.net/c/pcfj/reports/431200
これまでに測定した薬物では、即時析出濃度と臨界過飽和濃度の比は、3-7倍程度でした。
臨床投与量がこの範囲に入るケースは、あまり多くはないのかな?と思いますが、実際にやってみないとわかりませんので、現在調査中です。
やがて開発が進んで、塩が入手可能となり、投与量が決まっているのであれば、Cを臨床と合わせた条件で、溶出試験を行い、溶出プロファイルから判断できます。
(表面析出がありそうかどうか?も確認できます。)
溶出試験条件としては、いまのところは、炭酸緩衝液(pH 6.5, 10 mM (or 15 mM), I = 0.14 M)で作成したFaSSIFを用いて、50 rpmで試験するのが、最も生体を反映していると思います。
(表面析出は、炭酸とリン酸で大きく異なります。論文投稿中)
このような条件で、塩とフリー体の溶出プロファイルのAUC比を算出し、フリー体のFa予測値に掛ければ、とりあえずは、塩のFa予測値を計算できると思います。
ただし、これについては、今後詳細な検討が必要です(現在検討中です)。
炭酸緩衝液についてはこちら↓
https://www.c-sqr.net/c/pcfj/reports/446149
https://www.c-sqr.net/c/pcfj/reports/475089
表面析出についてはこちら↓
https://www.c-sqr.net/c/pcfj/reports/431263
https://www.c-sqr.net/c/pcfj/reports/418770
このように、塩からのFa予測は、まだまだ完璧ではないものの、まったく手も足も出ない訳ではありません。
https://www.c-sqr.net/c/pcfj/reports/510288
そうすると、平衡溶解度を用いたFa予測では、塩とフリー体でFaが同じになると予測されてしまいます。
もちろん、実際には塩として投与した場合の方が、Faは上がります。
塩の溶出により、消化管内において、一過的に過飽和濃度になることが、Faが上がる理由です。
そうすると、どの程度の時間、消化管内で過飽和濃度が続くのか?の見積もりが、Fa予測に重要となってきます。
この点について、前回紹介した論文の中で、考察しています。
https://www.c-sqr.net/c/pcfj/reports/517189
まず初めに、完全溶解時の溶解濃度(C)を計算します。
C = 投与量/消化管溶液量(130 mL)
塩のKspは通常とても高いので、フリー体の析出が全く起こらない場合には、塩は速やかに溶けます。
次に、Population balance modelで、この濃度における析出誘導時間(induction time (tind))を計算します。(PBMは、フリー体さえあれば構築できます。)
tindが小腸滞留時間よりも長い場合(例: tind > 4 h):
消化管での析出が起きないと予想されます。この場合、溶液投与と同じになるように溶解度を設定することでFaを予測できます。
tindが非常に短い場合(例:tind < 5 min):
消化管で瞬時に析出が起きると予想されます。この場合、析出物の平衡溶解度を用いてFaを予測できます。(例えば、析出物が(フリー体の)アモルファスの場合には、アモルファスの平衡溶解度(= LLPS濃度)を用いる。)
中間の場合:
より詳細なシミュレーションが必要です。
(注意:析出誘導時間は、1次速度式では表現できない。単純な析出速度定数では上手く行かない。)
LLPS濃度の実測あるいは予測についてはこちら↓
https://www.c-sqr.net/c/pcfj/reports/506760
逆に言うと、4時間以内に析出が起きない濃度(臨界過飽和濃度(準安定濃度))と、5 min以内で析出が起きる濃度(即時析出濃度)を計算し、投与量がそれらの範囲外の場合には、Gut frameworkでFaをある程度正確に予測できると考えられます。(Gut frameworkではフリー体の予測値は誤差2倍以内程度。)
https://www.c-sqr.net/c/pcfj/reports/431200
これまでに測定した薬物では、即時析出濃度と臨界過飽和濃度の比は、3-7倍程度でした。
臨床投与量がこの範囲に入るケースは、あまり多くはないのかな?と思いますが、実際にやってみないとわかりませんので、現在調査中です。
やがて開発が進んで、塩が入手可能となり、投与量が決まっているのであれば、Cを臨床と合わせた条件で、溶出試験を行い、溶出プロファイルから判断できます。
(表面析出がありそうかどうか?も確認できます。)
溶出試験条件としては、いまのところは、炭酸緩衝液(pH 6.5, 10 mM (or 15 mM), I = 0.14 M)で作成したFaSSIFを用いて、50 rpmで試験するのが、最も生体を反映していると思います。
(表面析出は、炭酸とリン酸で大きく異なります。論文投稿中)
このような条件で、塩とフリー体の溶出プロファイルのAUC比を算出し、フリー体のFa予測値に掛ければ、とりあえずは、塩のFa予測値を計算できると思います。
ただし、これについては、今後詳細な検討が必要です(現在検討中です)。
炭酸緩衝液についてはこちら↓
https://www.c-sqr.net/c/pcfj/reports/446149
https://www.c-sqr.net/c/pcfj/reports/475089
表面析出についてはこちら↓
https://www.c-sqr.net/c/pcfj/reports/431263
https://www.c-sqr.net/c/pcfj/reports/418770
このように、塩からのFa予測は、まだまだ完璧ではないものの、まったく手も足も出ない訳ではありません。