主な活動場所
insecter(虫屋)として身近な昆虫をはじめとした自然観察を行なっています。

 本当の生物多様性

2023-02-24
どうもこんにちは、insecterです。今日は前回記した通り昨日見つけた昆虫を紹介していきます。

実は、昨日ヤゴとカワゲラの幼虫以外にも2種類の昆虫を見つけていました。それでは紹介していきます。

泥の上を眺めていると、小さな楕円形の昆虫が歩いているのを見つけたので網で捕まえたのですが、あまりに小さかったため(体長3mmほど)持ち帰って顕微鏡で観察することにしました。

また、その近くにも小さな(こちらも体長3mmほど)細長い昆虫が歩いていたためそれも持ち帰って顕微鏡で観察することにしました。

持ち帰って顕微鏡で観察したところ、楕円形の方はミズギワカメムシ科の一種、細長い方はハネカクシ科の一種であることが分かりましたが、どちらも種類の多い紛らわしい種類であることから同定(生物の分類学上の所属・名称を明らかにすること)はほとんど諦めていました。

ミズギワカメムシ科の一種ハネカクシ科の一種しかし、ダメ元で家にある昆虫図鑑を開いたところ、なんとミズギワカメムシ(学名Saldula saltatoria・カメムシ目ミズギワカメムシ科)とコクロメダカハネカクシ(学名Stenus melanarius・コウチュウ目ハネカクシ科)であることが分かってしまいました。掲載種数が多いなと思って買った図鑑なのですが、ここまでとは思いませんでした。

その図鑑こそが『学研の図鑑LIVE昆虫新版』です。この図鑑は先程記した通り掲載種数が多いのですが、幼児くらいの年齢でも簡単に分かるようになっています。同じような系統の昆虫図鑑は小学館や講談社も出していますが、この図鑑の凄いところは全て生きている状態での写真が載っているということと、普通の図鑑なら掲載しないような非常にマイナーな昆虫達も掲載されているということです。普通の図鑑は標本の写真ばかり載せるので、死ぬと色が変わってしまう昆虫などは実際に野外で見つける昆虫と色が違います。また、昆虫は生きている時が最も美しいです。この本は正真正銘の『子供から大人の昆虫マニアまでつかえる』図鑑だと思います。お子様がいるお父様お母様には是非買ってあげてください。きっと大事にしてくれるでしょう。

おっと話が脱線してしまいました。ところでミズギワカメムシとコクロメダカハネカクシはどんな昆虫なのでしょうか。

ミズギワカメムシとはその名の通り「水際を歩くカメムシ」です。ミズギワカメムシ科は現在日本では24種が確認されていて、いずれも体長5mm前後の小さな昆虫です。体重はとても軽いので水面を歩くことも出来ます。

そしてコクロメダカハネカクシの方は、「小型の黒い複眼の高いハネカクシ」です。これを聞いても全く理解出来ない方がほとんどでしょう。まずハネカクシとはコウチュウ目の内の1グループで、とても種数が多いです。小さな鞘翅の下に後翅を折り畳んでいるのでこのような名前がつきました。ときにハネカクシ=毒虫という認識をされてる方がいますが、毒を持っているハネカクシはアオバアリガタハネカクシ(学名Paederus fuscipes・コウチュウ目ハネカクシ科)などの一部のハネカクシのみです。それでは「複眼の高いハネカクシ」について説明しましょう。ハネカクシの仲間には複眼が上を向いたメダカハネカクシというグループがあります。そしてコクロメダカハネカクシはメダカハネカクシの仲間の一種ということになりますね。

今回は随分小さくてややこしい昆虫を紹介しました。実は昆虫のほとんどは意識して探さないと見つからないような小さなものです。近頃「生物多様性」という言葉があちこちで使われていますが、"本当の"生物多様性とはこのようにとても小さな世界を含めた考え方です。生態系のピラミッドを支えている土台は紛れもなくそのような小さな生き物たちです。そんな小さな生き物がいなくなるという事は生態系のピラミッドが土台から崩れるという事です。生物多様性だけに関わらず、色々な物事について分かった気になっていると危険だと私は考えています。

今回は説教じみた終わり方になってしまいましたがこのブログを読んでくださった皆さんには「数mmほどの小さな世界を含めて生物多様性なんだ」という事が分かって頂けたら幸いです。次回は畑で見つけた昆虫について説明します。