保険者の主張を そのまま繰り返す 審査結果に驚く
2022-01-15
久下 勝通
清水一雄氏が審査請求代理人となり不支給審査請求がすすめられ、昨年9月30日に再審査請求公開審査が開催されました。その公開審査会の様子は事務局通信222号に清水氏の報告が掲載されています。
再審査請求審査会が終了して3ヶ月、結論は年を越すのかと思いましたが令和3年12月28日付に
て、「再審査請求を棄却する」との裁決書が出されました。
患者、施術者が行った審査請求を認めず、保険者の行った不支給を認めるという社会保険審査会の裁決ですが、裁決の根拠が問題です。
不支給理由を電話で確認したという不支給
保険者は、患者に関節拘縮は無いという判断から、同意書を提出した真鍋医師にたいして、二つの質問をしています。
一つは「患者の傷病により筋麻痺、関節拘縮が起きているか否か、医学的にみた所見を具体的にご教授ください」。という書面による問い合わせです。
この問い合わせに対して真鍋医師は「腰部脊柱管狭窄症によるしびれ感、下肢痛を認めます。筋麻痺はないか認めないように思われます。変形性関節症による両膝、両肩の稼働制限は認めるかもしれません。」とこたえています。
眞鍋医師は保険者からの照会に対し両膝、両肩の稼働制限、関節拘縮を認めているのです。
この眞鍋医師の回答を受け取った保険者は、「関節拘縮の記述が無い」ので、2020年7月20日に電話により、眞鍋医師から「関節拘縮は無い」との回答を得たというのです。
しかし、電話には眞鍋医師が出たのではなく、電話担当者が電話に出て「関節拘縮は無い」ことを伝えたというのです。この電話は医師との直接の電話でなく、電話担当を通した間接的な確認ができたという保険者の見解にすぎません。
保険者は、この無理矢理に押し付けたような「関節拘縮は無い」との確認を不支給の理由としており、乱暴とも思える保険者のやり方を社会保険審査会も認めているのです。医療を受ける患者の権利の尊重という立場から見ると、保険者の乱暴な不支給はとても認めることはできません。
療養費の支給によるあん摩マッサージ指圧治療は、患者が医師の診察を受け、同意書の提出を受けてあん摩マッサージ指圧師の治療が始まります。眞鍋医師の筋萎縮、関節拘縮を認める同意書により治療が開始されています。
電話による「関節拘縮は無い」と確認したという理由で、医師の同意書を無視する不支給は許されてはならないと思います。医師の同意により治療が始まるのですから、医師の診断により患者の病状の改善を確認し、患者の理解を得てその後の治療をきめるべきです。
都合の悪い情報は無視する不支給
もう一つの保険者の医師への問い合わせは「患者はあん摩・マッサージによる加療中ですが、加療によりみられる治療効果について医学的に見た先生のご意見をご教授ください」と問い合わせです。
この問い合わせについて「不明です。本人曰く施術により体調の維持を図る目的とのことでした。」という眞鍋医師の回答です。
この見解と、電話で確認ができたという医師の「関節拘縮は無い」との見解を総合勘案すると、「患者の症状は筋麻痺を認めず関節拘縮に至っていない、とみるのが相当」との判断で保険者の不支給を社会保険審査会も認めているのです。
しかし、加療によりみられる治療効果は、まず、患者に聞くべきです。そして、治療を行っているあん摩マッサージ指圧師に尋ねるべきでしょう。
患者が医師の診断により同意書の提出を受けた後、あん摩マッサージ指圧師は治療を行い、患者が治療の継続を求めれば、施術報告書を医師への提出し患者の状況を医師へ知らせる役割を与えられているのです。
治療を行った清水氏は、再審査請求の理由のなかで治療の効果について明らかにするとともに、関節可動域測定表を提出しています。この測定表は各関節の可動範囲を測定し関節拘縮の状況を明らかにしています。医師も同意書において肩関節、股関節の拘縮ありとしているのと一致しています。
しかし、このような保険者に都合の悪い情報は無視し、ひたすらあん摩マッサージ指圧治療の否定材料を作り出すような審査となっているのです。
患者の人権を無視する療養費の支給
社会保険審査会が裁決書の中で、療養費の支給対象について次のようにいっています。
「この療養費の支給対象となるマッサージとは、筋麻痺、片麻痺などの寛解処置としての手技、あるいは関節拘縮や筋萎縮が生じている部位について、その制限されている関節可動域の拡大と筋力増強を促し、その症状の改善を目的とする者で、本来であれば、保険医療機関において専門のスタッフによる理学療法の一環として行われる医療マッサージであると解される。」
療養費の支給の問題点は「本来であれば、保険医療機関において専門のスタッフによる理学療法の一環として行われる医療マッサージであると解される」という視点にこそ問題があり、乱暴な不支給を生み出す原因だと思います。
療養費の支給を進めるうえで重要な問題は、国民の人権の尊重であり、国民の医療を受ける権利、医療を選ぶ権利の尊重です。医療を選ぶのは国民であり、理学療法士の治療を選ぶか、あん摩マッサージ指圧師の治療を選ぶか、被保険者、患者の判断です。国民が必要とする医療を選べる制度へ、制度の運用へ改善が求められます。
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清水一雄氏が審査請求代理人となり不支給審査請求がすすめられ、昨年9月30日に再審査請求公開審査が開催されました。その公開審査会の様子は事務局通信222号に清水氏の報告が掲載されています。
再審査請求審査会が終了して3ヶ月、結論は年を越すのかと思いましたが令和3年12月28日付に
て、「再審査請求を棄却する」との裁決書が出されました。
患者、施術者が行った審査請求を認めず、保険者の行った不支給を認めるという社会保険審査会の裁決ですが、裁決の根拠が問題です。
不支給理由を電話で確認したという不支給
保険者は、患者に関節拘縮は無いという判断から、同意書を提出した真鍋医師にたいして、二つの質問をしています。
一つは「患者の傷病により筋麻痺、関節拘縮が起きているか否か、医学的にみた所見を具体的にご教授ください」。という書面による問い合わせです。
この問い合わせに対して真鍋医師は「腰部脊柱管狭窄症によるしびれ感、下肢痛を認めます。筋麻痺はないか認めないように思われます。変形性関節症による両膝、両肩の稼働制限は認めるかもしれません。」とこたえています。
眞鍋医師は保険者からの照会に対し両膝、両肩の稼働制限、関節拘縮を認めているのです。
この眞鍋医師の回答を受け取った保険者は、「関節拘縮の記述が無い」ので、2020年7月20日に電話により、眞鍋医師から「関節拘縮は無い」との回答を得たというのです。
しかし、電話には眞鍋医師が出たのではなく、電話担当者が電話に出て「関節拘縮は無い」ことを伝えたというのです。この電話は医師との直接の電話でなく、電話担当を通した間接的な確認ができたという保険者の見解にすぎません。
保険者は、この無理矢理に押し付けたような「関節拘縮は無い」との確認を不支給の理由としており、乱暴とも思える保険者のやり方を社会保険審査会も認めているのです。医療を受ける患者の権利の尊重という立場から見ると、保険者の乱暴な不支給はとても認めることはできません。
療養費の支給によるあん摩マッサージ指圧治療は、患者が医師の診察を受け、同意書の提出を受けてあん摩マッサージ指圧師の治療が始まります。眞鍋医師の筋萎縮、関節拘縮を認める同意書により治療が開始されています。
電話による「関節拘縮は無い」と確認したという理由で、医師の同意書を無視する不支給は許されてはならないと思います。医師の同意により治療が始まるのですから、医師の診断により患者の病状の改善を確認し、患者の理解を得てその後の治療をきめるべきです。
都合の悪い情報は無視する不支給
もう一つの保険者の医師への問い合わせは「患者はあん摩・マッサージによる加療中ですが、加療によりみられる治療効果について医学的に見た先生のご意見をご教授ください」と問い合わせです。
この問い合わせについて「不明です。本人曰く施術により体調の維持を図る目的とのことでした。」という眞鍋医師の回答です。
この見解と、電話で確認ができたという医師の「関節拘縮は無い」との見解を総合勘案すると、「患者の症状は筋麻痺を認めず関節拘縮に至っていない、とみるのが相当」との判断で保険者の不支給を社会保険審査会も認めているのです。
しかし、加療によりみられる治療効果は、まず、患者に聞くべきです。そして、治療を行っているあん摩マッサージ指圧師に尋ねるべきでしょう。
患者が医師の診断により同意書の提出を受けた後、あん摩マッサージ指圧師は治療を行い、患者が治療の継続を求めれば、施術報告書を医師への提出し患者の状況を医師へ知らせる役割を与えられているのです。
治療を行った清水氏は、再審査請求の理由のなかで治療の効果について明らかにするとともに、関節可動域測定表を提出しています。この測定表は各関節の可動範囲を測定し関節拘縮の状況を明らかにしています。医師も同意書において肩関節、股関節の拘縮ありとしているのと一致しています。
しかし、このような保険者に都合の悪い情報は無視し、ひたすらあん摩マッサージ指圧治療の否定材料を作り出すような審査となっているのです。
患者の人権を無視する療養費の支給
社会保険審査会が裁決書の中で、療養費の支給対象について次のようにいっています。
「この療養費の支給対象となるマッサージとは、筋麻痺、片麻痺などの寛解処置としての手技、あるいは関節拘縮や筋萎縮が生じている部位について、その制限されている関節可動域の拡大と筋力増強を促し、その症状の改善を目的とする者で、本来であれば、保険医療機関において専門のスタッフによる理学療法の一環として行われる医療マッサージであると解される。」
療養費の支給の問題点は「本来であれば、保険医療機関において専門のスタッフによる理学療法の一環として行われる医療マッサージであると解される」という視点にこそ問題があり、乱暴な不支給を生み出す原因だと思います。
療養費の支給を進めるうえで重要な問題は、国民の人権の尊重であり、国民の医療を受ける権利、医療を選ぶ権利の尊重です。医療を選ぶのは国民であり、理学療法士の治療を選ぶか、あん摩マッサージ指圧師の治療を選ぶか、被保険者、患者の判断です。国民が必要とする医療を選べる制度へ、制度の運用へ改善が求められます。
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