南寧遠征記②

2016-04-14
●4月10日<後編>
集合場所に至って明らかになったことですが、なぜ楊先生が塚本先生を16:30に呼ばれたかというと、先生と推手をしたいとのことだったそうです。楊先生は集合場所に至られる際に超常現象的なものに襲われ(自転車で走っている際に突然目が見えなくなったそうです。。。)、ひざを負傷されておりましたが、推手は三局行われました。一局目は、塚本先生が楊先生の技術を見るという形でした。文章で表現するのはとても難しいのですが、塚本先生が楊先生の力を計測されている感じが伝わってきました。二局目は、塚本先生が二度ほど楊先生を飛ばしました。三局目は楊先生が塚本先生の技を受けて対処することが増えたように見えました。塚本先生のお力はやはり、「すごい」の一言。楊先生も鄭先生のもとで学ばれて7ヶ月ということで、それでも塚本先生に気持ちと技術で食いつこうとする様子は鬼気迫る時間でした。「师兄,摸不了」と楊先生は連発されてとても気持ちの強い方なんだなと感じました。それを見ていた大先生もとてもご満足そうで、二人の手合わせに対しては「同門なのだから対処できる部分もある」とおっしゃっていました。塚本先生のお力の高さとそれに対する鄭大先生のご期待が感じられました。
         
         楊先生と推手をされる塚本先生

続いてメンバー(男性3名、女性4名)が集まったところで、まず塚本先生から楊先生へ靴のプレゼントが渡されました。楊先生は足が小さいため、日本の学校で使われている「上履き」が手渡されました。そして、塚本先生から南寧の学生さんに向けて一言。陳氏太極拳は今根っこを失おうとしている、その中で鄭先生のもとで養芯会・南寧とともにがんばっていきたいという旨のお話がありました。鄭先生も「一門としてがんばっていくことが大事である」という発言をお加えになられました。
        
         南寧の学生さんたちに語られる塚本先生

 貴重な場面を拝見した後、一般練習が始まりました。金刚捣锤を60回打つことから開始。私自身も鄭大先生・塚本先生のご指導のもと、なるべく低い姿勢からの金刚捣锤で取り組ませていただきました。学生の皆さんのレベルは初学者の大学生から、楊氏太極拳から移られた68歳の女性などさまざまでした。特に楊先生のご指導は姿勢の低さにこだわりをもたれているな、という印象を私ながら感じました。この時の練習はほぼ金刚捣锤の練習と各自の練習で約19:00に終了しました。大先生のお話の中心は「体の力の虚と実」を意識することでした。塚本先生が常々語られておられる重心の移動(「主」と「従」)について、大先生は「虚」(力の入っていない部分)と「実」(力の入っている部分)でお話されました。
 私自身は同時に、陳氏太極拳に興味をもたれている広西大学の英国人教師の方とお話をさせていただき、養芯会を通しての文化交流などを積極的に行っていきたいという旨のお話をさせていただきました。彼女自身は太極拳を学びに他の先生のもとで練習をしたそうですが、「こんなことも覚えられないのか」的なことをいわれたうえ、腰を負傷したらしく、「練習したいけど・・」的な感じでした。
 練習後は、大先生と食事。大先生が塚本先生を労わる姿がとても印象的に感じました。昼食時・夕食時に塚本先生から何度か養芯会の今後の方向性(文化団体としての取り組み、陳氏太極拳内部での位置づけ)についてお話があり、鄭先生は「諾」という姿勢をとられていました。塚本先生の言動に対する大先生の信頼は非常に厚いものだと考えてよいと思います。また、大先生の口からは南寧を先生の地盤としたいという旨のお話もありました。

●4月11日 最終日は、市内中心部にある金花茶公園という場所で練習しました。広西大学からはタクシーで約40分。30元程度。南方植物に囲まれた豊かな公園です。ここに来た理由は一つ。南寧の他の陳氏太極拳の練習を見学することです。近所にそもそも陳氏太極拳国際大師と呼ばれる人物の武館があるとのことだったのですが、ここへの見物よりも練習が大事ということで中止となりました。中国の公園で見られる風景と大きくは変わりませんが、私たち一行の練習はここでもとても目立っていたと思います。やはり、圧巻だったのは塚本先生の練習です。老架一路の練習を開始するとやはり多くの人々、周囲で練習する方々が集まるとともに、老架二路で震脚が響くとやはり多くの人々が集まってきました。この時には前日と比べても南寧の学生さんたちが、塚本先生に多く質問を重ねておりました。私も楊先生と大先生にご指導していただくことができました。この時のギャラリーの中には朱天才に指導を受けた方がいたようで、彼は新架を大先生に見ていただいていたようです。
        
         南寧の学生さんを指導される塚本先生
 練習後の食事会には楊先生の学生さんたちも参加されました。塚本先生から、次回来るときには十数名の養芯会会員を連れてくるとのお話があり、大先生・楊先生ともにぜひ歓迎させていただきたいとのことでした。
 食事会が終わると私たちは空港に向かいました。疲れがたまっていたのかタクシーの中ではうとうと。心地の良い疲労感のもと、上海への帰途につきました。

まとめ
 今回の南寧行は私にとってとても刺激的なものでした。塚本先生の学生として、まだまだ技術的に拙い私が同行させていただき、逆に申し訳なかったのではと感じていましたが、楊先生の学生との関わりの中では「もっとがんばらなければ」と思わされました。また、改めて塚本先生のお力は他を圧倒している、ということを確認しました。そして鄭先生の塚本先生への絶対的な信頼感は、養芯会の末席に身をおくものとしてとても勇気付けられた気がします。今後の合宿・中秋イベントについても多大なるご協力をいただけるものと確信しています。日中の文化の架け橋として私自身も邁進していきたいと考えています。