主な活動場所
愛知県一宮市を中心に動物介在活動、動物介在教育を実施しているボランティアグループです。

認定活動犬とハンドラーのペアで、高齢者福祉施設、障害者支援施設、教育現場を訪問しています。

 セラピードッグのストレス

2015-09-27
犬の存在が人の健康や精神状態に良い影響を与える、という事は色んな研究で明らかになってきました。
反対に「セラピードッグは活動からストレスを受けているのでは?」
というご質問もあり、以下最新の研究を一つご紹介いたします。

2014年にLisa Maria Glenk, PhD(University of Veterinary Medicine, Vienna)の研究がJournal of Veterinaly Scienceに掲載されました。

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Abstruct:
成人対象の精神科でのグループAAI、5つの継続セッションにおいて、
●セラピードッグ達の仕事動作(伏せる、座る、立つ、歩く、走る)、
●行動(リップリック、あくび、パウリフト、ボディシェイク、尻尾の振り、パンティング)、
●人へのリスポンス(おやつを受け取る、コマンドに従う)、
●唾液中のコルチゾール値
 を測定。
対象は活動経験2年以上の5頭(平均5.4歳)。

唾液中のコルチゾール値は、セッション前に比較して、1番目のセッション後、2番目後、3番目後、と低下し、セッション4後、5後の計測値はセッション前より激減。仕事の無い日にそれぞれの家で計測したコルチゾール値と仕事の場面で計測した数値では変化はなかった。
行動のパラメーターについても、5セッション中に大きな変化はなかった。
5回目のセッションにおいて、リップリックとボディシェイクの数値減は、コルチゾール値の低下に相関している。
★ 結果として、トレーニングを受けた犬は薬物乱用患者を対象としたセッションに連続して参加することにストレスを受けていない。
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この研究はイタリアの認定セラピードッグ達が対象となっており、まずは適性試験を経て、活動への適性が高い犬達を選んでいるところがこの結果に繋がっていると思います。もちろん、ハンドラーのトレーニングも、正の強化を中心とした犬のモチベーションを上げる方法であり、ハンドラーへの信頼感も高く、自信のある犬達であることも一因だと思われます。

まずは犬に活動の適性があるかどうか審査する事が重要です。
私達は、犬が自ら人と関わる事を望むか、多様な人や犬、現場刺激に耐性があるかどうか、
という事を重視してセラピードッグ適性試験を行っています。
人間でも、知らない外国人団体に囲まれたら、交流にワクワクする人もいれば、
とにかくカチカチに緊張する人や、その場からとにかく離れたい人もいますよね。
その中で、知らない環境や人種や外国語に触れることを好む人、のような
友好的で自信のある犬を活動犬として選ぶようにしています。

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Dr. Glenkはこれ以前の2013年の研究で、リード無しで活動するセラピー犬の方がリード付で活動するセラピー犬に比較してコルチゾール値が低かったことも報告しています。

これについて、同大学のプレスリリース内、Dr.Glenkは以下コメントされています。

「(コルチゾール値は)犬が自由に動けるかどうかによります。例えばリードに繋がれてなくて、いつでも部屋から退出する自由があるか。(この研究では)グループセラピー中、犬達は自由な状態でした。水も好きな時に飲めて、部屋中自由に動ける状態でした。」

現実問題として、ノーリードで活動した際に何か起きたら保険は適用外となるだろうと思われます。複数犬で狭い会場の場合、リスクマネジメントの観点から通常はノーリードでは活動しません。もちろん、活動によってはノーリードで行います。

いずれにしても、どの活動犬も、活動中、頻繁なリップリックやパンティング、顔をそむける等不安なサインが確認された場合は、即落ち着ける場所までハンドラーが誘導する事となっています。施設を出て駐車場や車内で一休みするのも自由としています。
クラブでは、ハンドラーが自分の犬の自由を守る事、決して犬に無理をさせない約束となっています。

私達は、対象者様はもちろん、施設で働く方々も、対象者様のご家族も、犬もハンドラーも、活動関係者全てに喜びのメリットがあるよう、活動していきたいと思います。
応援よろしくお願いいたします!


檜垣 史 CPDT-KA